「さて、困ったものじゃな。どうしたものか」
目の前に横たわる少女を見つめながら、あごとそこに付属している白く柔らかな髭にそっと手を添えた。
「ふむ、あやつに任せるとしようかのぉ」
口元に少々意地の悪い笑みをのせたあと、何も知らない少女を腕に抱き、自分の部屋の方へとゆったりと歩を進めたのであった。
こんな夜更けにあいつが呼び出すなんて、きっとろくなことではないだろう。
そんな思いでいっぱいであったが呼び出しを無視できるはずもなく夜も更け、人気のない城の中を闇に紛れ気配を絶ちつつ目的の場所へ向かった。
「よく来たな」
気配は完全に絶っていたつもりだったが、そんなものはどこ吹く風でのんびりと声をかけてくる。
夜中というにはまだ早く、夕方というにはいささか遅いそんな時間のことだった。
この狸が、と心の中で小さく舌打ちした。
「断れないと知っていてよくいうものだ」
「ふん、まぁな。今日は頼みがあって呼んだのじゃ。」
「頼み?」
いつもは命令といった口調・態度を崩さない彼の、珍しい言葉に首をかしげた。
「この少女を預かってはくれぬか?」
そういって立っていた場所から体をずらし、布団の中で安らかな寝顔を見せる少女を初めて男の視界に触れさせた。
誰だ?この少女は・・・。
王の隠し子ということはないだろうし、いやこいつが気にかけるということは後々王の役に立つということか?
「隠し子ですか。よくやりますね、そのお年で」
ため息混じりに少女の方に近づくと、頬にかかる髪を指で軽く払ってやる。
「まぁ、どうとでも思っておけ」
こちらの答えがわかってか、嫌味にも笑顔で応じてくる。
「この娘の名は?」
「さあな。目がさめたら聞くがよかろう」
こうして本人も全く預かり知らぬところで彼女の行き先は決められたのだった。
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*後書き...
最初から変換なしになってしまってすみません。
嵐都炎夏様、つづきよろしくお願いします(汗)
→ 「深夜の密談」 Written by 稚香