誰かにおんぶされているらしく、

 ゆらり、ゆらり、
 ふわり、ふわり。

 久しぶりにぬくもりを感じ、起きなくてはいけないと思いながらも、また、まどろみに落ちていく。



 前回、眠りに落ちたときは、ぐるぐると不安感が渦巻いていたが、今回は何故か安心感が得られた。






「んっ・・・。」
 もう昼が近いのか日は高く昇っており、窓から差し込む日差しが眩しかった。

「ここは・・・。」

 どこだかわからない部屋。
 ただ、自分が捕まっている訳でないことだけはわかる。
 手も足も拘束されておらず、窓にも格子はない。
 声を発しようとしたが、もしかしたらと思い口を閉じる。

 部屋をぐるりと見渡し、どうしたものかと考え込む。
 結局、人が来るまで狸寝入りをしようと決める。


「おや、目が覚めたようだね。」
「うわっ!」
 狸寝入りを決めた直後にやってきた人。
 不意を着かれて肩をすくめる。

「驚かせてしまったようだね。」
「あ、いえ。あの、あなたは?」
 人の良さそうなおじさんがこちらを見て微笑んでいた。

「この家の主だよ。君が倒れていたから連れてきたんだ。」

 倒れていた。

 そうだ、私は倒れていた。
 冷たい、どこからか水の音のするところに。

「ありがとうございました。」

「いいよ。私が勝手にしたことだからね。」
 おじさんはまた、にっこりと微笑んだ。

「ところで、君の名前は?」

「名前、私の名前はです。」
 私が名前を告げるとおじさんは思案顔になりぽつりと呟いた。

、聞かない名だな・・・・・。」
 やっぱり、私はここの人ではないのだと確信を持つ。

「帰るところはあるのかい?」

「…ないです。」

帰るところなんてない。
ここの人でもなく、自分のいたところさえ忘れた私に、帰るところなんて存在しない。

「うちに居るといいよ。私の娘と友達になってくれないかな?」
 そう言ったおじさんの微笑みは優しくって、差し出された手は暖かかった。





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*後書き...
遅くなった上に稚拙な文で申し訳ないです。
第3回目担当の嵐都炎夏です。どうぞ、宜しくお願いします。
それでは、次の担当、結羅葛葉さまにバトンタッチです。



   → 「目覚め」  Written by 嵐都炎夏