人生ってのは、何が起こるかわかんないから面白い。

 だから人は、足掻いて、恥をさらして生きようとする…。



「動くんじゃねえ!この人質が目に入らねえのか!!」

 耳に聞こえてきたのは、あまりに月並みなこんな台詞。
どうやら、ここは天国ではないらしい。

 つーか、天国に銀行強盗ってありえないだろ?


 周りを見渡せば、強盗にしてみればまさに四面楚歌な状況だった。
どうやら銀行から金を奪ったまではよかったが、思った以上に警察の行動が早く、逃走しようと外へ出てみたら、もう周囲を包囲されていて。仕方なく犯人は、銀行にいた一般人の一人を羽交い締めにして人質にした。おおかたこんなところだろう。


 どうでもいいけど、頭が痛い…。
 固い物を突きつけられているような、そんな感触がします。

 んでもって、ここはどこよ?


 仕方なく私は、再び辺りを見渡した。右を見ても左を見ても、犯人を取り巻く警官たちばっかだ。
 そういや疑問なんだけど、日本警察の制服って詰め襟だっけ? ブレザー仕立てだったと思うんだけどね。ついでに色ももっと暗い黒に近い、青色だったと思うぞ。

 なにはともあれ、とりあえずここは日本ではなさそうである。だって、あの人たちを見てると警察というよか、軍に見えるんだもん。
 日本に軍隊はいないもんね。自衛隊はあるけど。


…って、ちょっと待て。


 ここが日本じゃないということは…当然。
 ハガレンのアニメは、放映してないから見られない。

「そんな殺生なぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 それじゃ私は、何のために徒歩20分の距離を決死の思いで全力疾走したの?
 私は何のために、死ぬ思いで6時までに自宅へ帰ろうとした?
 私は、何のために、花の15才で夭逝したんだよっっ!!!!!

 くっそ、こうなりゃ自分が死んでるなんて認めないっ!
 ハガレン見るまでは、絶対に死なないんだから!!!


 そんなことをしていると、頭に感じる痛みがよりひどくなる。なんだろう、と後ろを振り向こうとすれば、頭を固い物で殴られた。

「叫ぶんじゃねぇっ!! 人質は人質らしく、黙って捕まってろ!!!」

 ……人質?誰が?

 我に返ってみれば、強盗犯に人質にされてたのは他ならぬ私だった。
頭につきつけられてるのは拳銃の銃口だな、多分…。

 にしても人質取れないと強盗できないなんて、まだまだだね(某庭球王子風)。
私なんかその気になれば、針金一本で鍵開けするけど? そして、わざわざ女子供を捕まえようとするその根性が気に喰わん!

「か弱い乙女を人質にとっておいて、口だけは一人前に叩くもんだわ」
 気がつけば私は、ふと思ったことをそのまんま口にしていた。

「なにぃ〜?」

「まあ…こんな小さな銀行襲ったくらいでいきがってるんじゃ、仕方ないけどね」

「ンだと、コラ!もういっぺん言ってみやがれ!!」

 私の言葉に頭にきたらしい犯人が、持っている銃の口をさらに強く頭に押し当ててくる。拳銃を構成する鋼鉄は、私の頭の骨に当たって異音を発す。

 痛いんだけど…。


 もし普通の人間なら、ここで怖くなるんだと思う。
 かくいう私だって、普通の状況なら怖さで口を閉じるよ。

普通の状態だったらね?

 だけど、おあいにくさま。今の私はすでに一度死んでる身なんだよ。
 一度死んだんだから、度胸だって一度も死んでない人間よりはある。
 あの世を見てきた女子中学生をなめんなよ?


「何度でも言ってやろうじゃない! こんな辺境の銀行を襲っていい気になるなんて、所詮小物は小物ね! 男だったら国の全財産が入った金庫とか、金銀財宝のたくさん入った倉庫くらいを狙うぐらいの粋を見せたらどうなの?!
小物は小物らしく、おとなしくバイトして地道に金を稼いでればいいのよっ!!」
 キッパリ言い放ち、私はそいつを鼻で笑ってやった。

「…っのくそガキがぁっ!!」


ぷっちん。


 言ったね、こいたね、ぬかしたね?
 身長が低いのと、童顔で年より幼く見られること。
 ものすごぉぉぉぉっく気にしてるってのに!!!!


 犯人の指が、私の頭に突きつけた拳銃の引き金へと伸びる。

 だけど、私だってじっとしてるわけがない。さっきの暴言に腹を立てていたというのもあるけど、ほとんど本能で動いてる。第一、いくら一度死んだ身とはいえ、鉛玉を打ち込まれてヘラヘラ笑ってられるほど私は人間できてないのよ!
 だから銃口の向きを変えてやろうと(できれば犯人の方へ向けるのが一番か)、やつの拳銃を持つ手を押さえ込もうと悪戦苦闘。



 しかし…。私が銃口を犯人へと向けさせるよりも、わずかに犯人が拳銃の引き金を引く方が早かった。

 そのことを理解した瞬間、私は死に物狂いでそいつの腕を両手で掴む事に成功していた。

 そして。
 頭に突き刺さる鉛玉の激痛を覚悟して、私は目をつぶった。



「ぎゃああああああああっ!!!」

 だが次の瞬間、辺りに響き渡ったのは犯人の声だった。

 驚きに慌てて目を開けてみて、私は絶句する。
最初に目に入ったのは、碧の光を帯びた無数の光の触手。バチバチと耳障りな音を立てるそれは、周りの迷惑もわきまえずに辺り構わず火花と閃光を撒き散らしていた。
 男の悲鳴は、電撃に全身を灼かれての苦痛の悲鳴だったのである。
 驚いた私が犯人の手を離すと、男は糸の切れた操り人形のように地面へと倒れ込んだ。それとほぼ同時期、私たちの周囲を取り巻いていた電撃が消える。犯人は、身体中を電撃で灼かれてほんのり黒焦げになっていた。
だけど、とりあえず死んではいない…と思われる。
 男の身体に残留する電撃が、時折パリパリと音を立てて姿を見せると、ひきつけを起こしているかのように身体が動いていたからだ。


 ときに根本的疑問なんだけどさ…。
 この電撃、どっから降ってわいた?


 不思議な出来事に私が首を傾げていると、

「ちっ!このガキ、錬金術師か?!」
 犯人の仲間の一人が、悔しげに舌打ちする。

 ………錬金術師?誰が?

 私が思わず声のした方を向けば、犯人たちはわずかに後退る。彼らの表情がどことなく追いつめられたように見えたのは、多分気のせいではないと思う。

「私が、錬金術師?」

 あんたたち、ハガレンの見過ぎじゃないの?

「とぼけるんじゃねえ!!」
 訝しんで訊ねた私に対して、犯人たちの一人が声を荒げる。
震えるその手には、私の方へ照準を向けた拳銃が握られていた。
向けられた銃口に、私は思わず怯んだ。

 しかし、怯みつつも口を動かすことは忘れない。

「丸腰の相手に対して武器を使うなんて卑怯よ!!」

「黙れ!錬金術の使えるやつに丸腰も何も関係あるかっ!!」
 完全にイっちゃってる目をしている男の指が、拳銃の引き金にかかる。

 ひええええっ!!!二度も打たれるのは勘弁!!!

 私は無駄とわかりつつも、慌ててその場を離れる。
しかし、拳銃は遠距離攻撃のエキスパート。走って逃げたところで、確実に鉛玉は私を貫くだろう。それでも逃げずにはいられなかった。




 そのとき。不意に、私の腕を誰かが強く引っぱった。
 引く力が強すぎて、私は思いっきり身体のバランスを崩し、顔面から地面へと倒れ込む。ところが倒れ込む身体を受け止めたのは、固い地面ではなく、柔らかくてあたたかい何かだった。

 思わずつむっていた目を開けば、視界には鮮やかな青が広がっている。

 ん?

私が思わず訝しむのと。


パチン。


 何かを鳴らす乾いた音が空気を震わせたのは、ほぼ同時ーー。



*後書き…
・大幅に修正を加えました、があんまし変わってないです。
相変わらずハガレンキャラが出なくて申し訳ない。
でも今回は、ちょっとだけ微妙に出てます!
そして管理人趣味もほぼ完全に暴露されてますな…。
次回は当然、あの方のご登場です♪