フロト湿原の交戦(前編)
時は巡る・・・
それはいかなる力を持つ大悪魔であろうとも自由に出来ない世界の理
時は巡り、魂は再び転生する・・・
それがいかなる悲劇をもたらそうとも、自然の摂理はねじ曲げること叶わない
いにしえの古き禁断の知
いにしえの古き秘密の誓約
世界と世界の繋がりを制限した最大の掟
時が経てば秘密もいつかは明らかになり誓約も破られる
それはけしてあってはならないこと
それでも、時は巡り来る・・・・
「じゃあ、そろそろなわけね・・・」
「うむ・・ここ最近、妙に悪魔達の気配が増えておってな。
まあ、それが必ずしもあやつの復活に繋がるとも思えぬが・・・、用心に超したことはあるまい?」
銀色の髪と深紅の瞳持つ少女は、とても子供が話すような口調ではない話し方をする。
しかし彼女の前に座る眼鏡の女は、特に気にした様子もなく先を続けた。
「似たようなことを彼も言ってたわ。
それに占いで見ても、暗雲がかかっていて先がうまく読みとれないのよ。」
「ロクでもないことが起こるであろう事は、ほぼまちがいないな。」
「そうね。で、今日ここに来た用件は、あの子のこと?」
自分の顔をのぞき込むように問いかけてきた占い師に、厳しい一瞥を喰らわし、少女は俯いた。銀色の髪で隠れてしまった顔からは表情は読みとれない。
「・・うむ。あれには正直のところ、今回の件にはあまり関わらせたくないのだがな。
仕方あるまい。わらわのなかにある力が、そう告げておる・・。」
「わかったわぁ、まっかしといてぇ〜」
ドンと胸を叩いて見せた後、占い師は両手を組んで少女の方をなにやら期待の眼差しで見ていた。それに気づいた少女は、肩をすくめるとどこからともなく取り出した一升瓶を彼女の机にドンと置いてやる。
「にゃははははぁ〜、毎度あり〜!!」
『・・全くおぬしというやつは・・・。では、確かに頼んだぞ、メイメイ。』
「おまかせあれぇ〜。」
「実験?」
食器を洗う手を止めて、は後ろのメイメイを振り返った。
「そうなのぉ。エクスから直々に頼まれてた依頼でねぇ〜。
今日中に届けなくちゃなんないのよぉ〜。」
「師匠の・・・。仕方ないなぁ・・もう・・。」
うさんくさいとは思ったものの、エクスがそれに関わっているのでは仕方ない。
は異邦者である自分に召喚術を教えてくれているエクスに、多大な恩義と尊敬の念を寄せている。そのせいか彼の名前を出されると、断りたくても断れない。
もちろんそれを見逃すメイメイではない。
「ありがとねぇ、ちゃん。おかげで助かるわぁ〜。」
両手をにぎにぎしながら、メイメイは喜んで彼女を実験部屋に案内した。
「・・・・なに、これ?」
「ん〜?見てみればわかるでしょぉ〜、酒樽よぉ〜。」
「で。何するの?」
「ちゃんにはぁ〜、この中に入ってもらうのよぉん。」
「・・・・前言撤回。私、仕事に戻るから。」
方向転換して台所に戻ろうとする。
メイメイは彼女の腰にしがみついて、必死に引き戻す。
「ねぇ〜、ちゃぁん、お願い。この中に入ってくれるだけでいいのよぉ。」
「だからなんで、あんなのに入らなきゃいけないのよ!!」
「だ・か・らぁ〜、エクスのためなんだからぁ〜」
「どうして酒樽に入ることが、師匠のためになるのよ!!」
の正論にもメイメイは怯まない。
「そこまでは、私も知らないわよぉ〜。
でもぉ、エクスがどうしても必要だって言うからぁ〜・・・。」
「・・・・・。」
最終的にが承諾したことは、言うまでもない。
丁度この頃。
フロト湿原では、トリス達とイオス達が戦いをしている真っ最中だった。
「我が声に応え、来たれ!プチメテオ!!」
トリスの声に応じて召喚された岩石が、丁度リプシーを唱えかけていた召喚士を直撃した。その痛みで詠唱を途切れさせた召喚士にリューグの振るう斧が容赦なく振り下ろされる。
「ちっ、俺の出番を取るんじゃねえぞ、ニンゲン!」
一足先を超されたバルレルが悪態をつく。
『見苦しいぞ、小僧。己の不甲斐なさを他人のせいにするではないわ。』
顔色一つ変えず、身長の倍はあろうという大鎌を振るって射程範囲内の敵を一撃の下に倒した銀髪の少女は、そんな小悪魔に鋭い一瞥を向ける。
「二人とも言い争う暇があるなら、目の前の戦いに集中しろ!」
そんな二人にネスティの怒号が飛んだ。
「誓約の名において、清い水の流れをここへ招け!アクアトルネードッ!!」
ミニスはローレライを召喚すると、放たれた矢を射手ごと水流で攻撃する。射手がよろめいたところに、正確無比なケイナの矢が命中した。
『さて、雑魚は倒したものの・・・やはりやつらはそう簡単にはゆかぬか。』
「あの機械兵士は厄介だぞ。剣や矢の攻撃はほとんどきかねえからな。」
「うん。それにイオスもうかつに近づいていけば、怪我するだけだもんね。
やっぱりここは召喚術で遠距離攻撃した方がいいかな。」
傲慢かつ尊大な態度は変わらぬまま、銀髪の少女が鎌を構えた。
その後ろについたフォルテもやはり愛用の大剣を構えてみせる。
トリスは彼らの後ろから、冷静に状況を判断する。
そして、手にもつサモナイト石を握りしめた。
しかし。
そうやって悩む彼らの思惑などお構いなしに、向こうさんは攻撃してくるわけで。
「そうやって考えてる暇があったら、とっとと攻撃しろ!」
飛来するゼルフィルドの銃弾を斧の刃で防ぎながら、リューグが吠える。
『うむ、そうじゃのぉ。おい、ネスティ。耳を貸せ。』
相変わらず落ち着き払ったの態度に、リューグが眉をつり上げた。
だがは特に気にした様子もなく、後方待機していたネスティの側までやって来る。
「その命令口調はどうにかならないのか、。」
『仕方あるまい。もう何千年もこの口調だからのぉ、今更変えられはせぬよ・・・』
そう言いながら、は素早くネスティに耳打ちする。
『よいか?』
「ああ、わかった。」
「もネスも二人だけで何話してるの?」
トリスが訝しげに訊ねてくる。ネスティはそれに答えるべく口を開きかけるが、それよりも先にが飛び出していく。
「?!」
「あの馬鹿!!」
舌打ちしながらリューグが、彼女を追って走り出す。
の予想外の行動に皆が慌てるうちで、ネスティはミニスにこっそりと耳打ちした。
の行動の裏を知って安心したミニスは、早速言われた通りに召喚術を詠唱し始める。
の突飛な行動に驚いたのは、何も味方だけではない。
敵もまさか彼女が単身で突っ込んでくるとは思っても見なかったのだろう。
それでもすぐに、ゼルフィルドの銃弾は、真っ直ぐにコチラへ向かってくるを正確に狙い撃つ。
だが、はそれをすべて紙一重で交わしてみせた。
「!!」
驚異の速さでゼルフィルドに肉薄したは、鎌を持つ手を持ち替えて・・唐突にその場で地を蹴り、高く跳躍した。それとほぼ同時にミニスの召喚したヒポス&タマスの吐くダークブレスが、辺り一帯の視界を遮った。
「鬼界より来たる山の主よ、その手の団扇で風を切り裂け!カゼキリ!」
「我が声に応え、来たれ霊界の小悪魔!イビルファイヤ!!」
暗闇に乗じて完成されたケイナとトリスのダブル攻撃がゼルフィルドを直撃した。
「ゼルフィルド!」
視界ゼロの空間の中でも音で機械兵士の身に起こっている事態を察知したイオスだが、動こうにも動けなかった。ゼルフィルドを狙ったと見せかけたの鎌が、自分の首にかかっていたからだ。一歩でも動けば、確実に首は落とされる。
「機界におわす汝に再び問おう、汝が力は敵を切り裂く大いなる刃!ギア・メタル!」
身動き一つとれないイオスに、ネスティが機界から召喚したベズゾウは、無情にもその牙をむいたのだった。
*後書き・・・
・2逆召喚連載をする前に、連載にしようかと思って書き殴った作品。
夢主設定は、クラフト・4夢主の前身設定です。要するに使い回し(ゲフン)。
当時はゲーム沿いのお話で進める気満々だったんですねぇ…自分。