「おい!一体何がどうなってるんだ、!!」 私に手を引かれて走りながら、が説明しろ、と怒鳴ってくる。 そりゃ無理もないんだけど。 だって、私と同様サモン好き女。 発売日当日に二人してソフトを店に買いに行って、どちらが先にクリアできるか競い合ってた仲なのだから、当然ミニスやイオスの存在を知っているわけで。 私だって、彼女と同じ境遇なら絶対に同じような態度をとってるはずだ。 なんだけどね・・・・。 「悪いけど、今は説明してる時間がないの。後でゆっくり話すから!!!」 ハッキリ言ってあそこにたむろしている獣人たちをどうにかしないことには、ゆっくりと話なんてできやしない。が不機嫌になるのを承知の上で、私は彼女の要求を却下した。 そして彼女は、不機嫌になるかと思いきや。 不敵な笑みすら浮かべて、 「あいつらを倒しちまえば、話す時間も出来るんだろ? なら逃げてないで、さっさと奴らを殲滅しちまえばいい。」 なんてことをのたまわってくる。 さすが、自他とも認める喧嘩好き! だけど、彼女はあくまで啖呵を切るのが得意なだけで、特に護身術を習ってるわけでもない。ましてやあんなやつらと戦う術なんて持ち合わせていないのだ。 「無茶言わないでよ!できたらとっくの昔にやってるわい!! 私は刀持ってないし、あんただってあいつらと戦うことなんてできないでしょ!! だから今は逃げるの!!!」 「逃げるなんて、お前らしくもない。 ちょっと見ない間に、ずいぶんと腰抜けになったもんだな。」 ムカッ!! 「なによ!危ないところに一番最初に駆けつけてやった親友に向かって、そう言う口を叩くわけ?!」 恩を着せるつもりはないが、やっぱり納得出来ないところはあるわけで。 私は、彼女に向かって珍しくも皮肉らしい言葉を飛ばしていた。 「誰も助けてくれなんて、頼んだ覚えはない。それに危ないところでもなんでもなかった。」 だが、対するは怒るでもなく。 ひょいと肩をすくめて、いけしゃーしゃーと言ってのけた。 「あんな絶体絶命の状況で、そんなことよく言えるわね、。」 減らず口を叩くに呆れた口調で私が言えば、彼女は口端に笑みを浮かべた。 「絶体絶命?あれは作戦の一つだったんだぜ。 そんなことも見抜けないようじゃ、もまだまだだな。」 ・・・・もはや返す言葉もないとは、まさにこのこと。 戦う術のない彼女がなんの作戦を立てるというのだ? 私が返答に困っている・・もとい絶句してる事に気づいたのか、は心外だと言わんばかりに口を尖らせた。 「、今の私を今までの私と思うな。1年前に私が神隠しに遭ったこと、忘れてないだろ? あの時から、私は少し変わったんだ。」 「変わった?」 「ああ。この世界で何が起こっているのか、詳しいことまではわからん。 だが少なくとも言えることが一つある。もうここは今までの常識が通じる地球じゃない。 だからオレも無視しておくわけにゃいかんのだよ。」 「・・?」 「獣人騒ぎが収まったら教えてやるよ。」 意味ありげに微笑む。 私はそれをただ呆然として見つめることしかできなかった。 「にしても、どうしてお前の家はこう意味もなく馬鹿広いんだろうね。」 延々と続く道を走り続けながら、一向に西の玄関がある場所へ着かないためか。 は私に手を引かれたままでぶーぶーと不満を漏らす。 「文句を言いたきゃ、私のご先祖たちに言ってよ。」 私だってしょっちゅう同じこと思うけどさ、しょうがないじゃん。 そんなことを思いつつ、走っていると。 唐突に、が足を止める。 「ちょっと、?」 訝しげに見つめる私の視線を受けたままで、 は呆然とその場に立ち尽くしていた。 ええいっ、なんだってのよ!! こっちには早くを安全なとこまで避難させ、そのついでに刀をとってきてイオスとミニスのいる場所へ戻らなきゃならないってのに!!! 「。」 「何よ。」 「サモン2のゲームで、一番最初にガレアノが出てきた時のこと、覚えてるか?」 「は?スルゼン砦でゾンビたちがトリスたちを襲ってきてた時のこと?」 そりゃ覚えてるわよ。 あの超陰険なやり口は覚えたくなくても、しっかりと覚えてますとも! ついでに言うと、あちこちのドリームサイトでその辺のストーリィはキッチリ読んできてるからね!!!ゲームプレイした時のことは覚えてないけど、覚えてるわ! だけど、それが一体なんだってのよ? 「そうだ。あの時、ゾンビたちは何度倒しても起きあがってきてただろ? やつらを操ってる召喚師を倒さない限り、終わりはない。今回も似たようなケースだぞ。」 「どういうこと?」 「よく見てみろよ。 たちが結構数を倒してるのに、獣人たちの数が全然減ってないだろ?」 言われてみれば、確かにそうだ。 獣人の数はもともとそんなに多いというほどでもなかったのに、一向に数が減る兆しが見えない。さっきだって、ミニスのアクアトルネードでだいぶ敵を一掃したはずなのに、全然敵の数が減ったように思えなかった・・・・。 「つまり。どっかの馬鹿が魔力にものいわせて、倒されるたびに獣人を召喚してるって事だよ。そんな人間離れした召喚術を使えるやつの心当たり、ないとは言わせないぞ。 だってサモン2クリアしてるんだから、あいつの存在は知ってるだろ?」 「人間じゃない・・・、ってまさか!!悪魔’sもしくはメルギーの仕業?!」 メルギーという愛称に苦虫噛み潰した表情を浮かべつつ、は溜息をつきながら人差し指をピッと押っ立てた。 「獣人が住む世界は、メイトルパ。やつらのなかに魔獣使いがいたろうが。」 魔獣使いの悪魔。 傀儡戦争の時には、本領発揮したレシィくんの本来の能力の前に危うく石像になるとこだった、あのビーニャ? 「って・・・・ビーニャの仕業ってこと?!」 「そうだよ。ったく、まさかあんなイカレたガキまで来てるとは、正直計算外だ。」 清楚なお嬢様お嬢様した外見とは裏腹に、は盛大に舌打ちをすると、ガシガシと男らしく髪を掻きむしる。この仕草は、悔しいことがあったときに見せるの癖だ。 「計算外?それってどういうことよ!」 まるでこのことを知っていたと言わんばかりの口調で愚痴るに、私は詰め寄った。 「あ〜・・・、それは後でゆっくり説明してやるよ。今はあのイカレ悪魔を倒す方が先だろうが。やつとルヴァイド、イオスを鉢合わせさせてみろ。ろくなことにならんぞ。」 そうだった!! まだレイムがデグレアを滅ぼしてたこと、あの二人は知らないんだ。 となれば、あっち側についてしまう可能性は限りなく高い!!! ルヴァイドは言い意味でも悪い意味でも意志が強い人だし、イオスはルヴァイドの決めたことには従いそうだし・・・・。 いかん!!! このままでは、二人がビーニャに拉致される!!! 「それはダメよ!!折角綺麗どこがたくさん家に集まってウハウハ、目の保養になってるってのに、それをガレキュラビーに渡してなるものか!!!!」 「おおとも!!オレだって、まだ二人を並べて鑑賞してないんだぞ!! だけにいい思いをさせてなるものか! ビーニャをなんとしても追い払って、デグレアズをお前の家に置いておくんだ!!! そうすりゃ、オレだっていつでも美形騎士をセットで鑑賞できるってもんだ!!!! いくぞ、!」 「おっっしゃあっ!!行くわよ、!! 打倒ビーニャ!!!そんでもって、ルヴァイドとイオスを完全GET!!!!」 変わったとか言ってたけど、 この辺の腐女子っぷり&面食いはまるで変わってないじゃん。 実は、美形=鑑賞物と言いだしたのは、他ならぬ彼女だし。 しかも・・・、完全に目がいっちゃってるよ・・・。 「ふっふっふ・・・、待ってやがれ腐れガキ悪魔め・・・。 オレの目が黒いうちは、絶対に美形騎士セット独り占めなんてさせねえからな! テメェらは親玉の腹黒吟遊詩人の顔でも拝んでやがれ!!!」 「うふふふふふ・・・、私の愛刀“焔龍”が悪魔の血を吸いたがってるわぁ・・・。 ゲーム本編第11話“処刑台の騎士”では、よくもルヴァイドの命令無視して勝手にシャムロックの部下を殺しやがったわね・・・・!!!おかげでルヴァイドは卑怯者呼ばわりされるわ、ローウェン砦は死体だらけになって陥落するわ!!! おのれ、ビーニャ許すまじ!!あまつさえ人の家の周りに獣人放って、私がミニスとイオスを愛でるのを邪魔しやがって!!! 天照のお姉さまに変わって、この私が成敗してくれる!!!!」 お互いに言いたい放題好き放題言って、テンションを盛り上げてると。 がポンッと手を打って、私に入れ知恵をくれた。 「ビーニャのいるとこは、お前の北側の庭を使えばショートカットになってるとこだ。 住宅街の端っこだな。、ついでだ。お前、自分の刀をとってこいよ。 どうせお前の部屋の前通るだろうし、ビーニャをぶっとばすにしても武器があった方がいいだろ?」 「そうね。そうする。じゃあ、行くわよ!!!」 「「打倒、ビーニャ!!!!!」」 私たちは高らかに声をハモらせると、家の中へとダッシュで駆け込んでいった。 相手があのメルギトス配下の悪魔とわかっていながら、私たちの頭の中にはあいつをぶっ飛ばすことしか頭にない。完全暴走状態だ。 だ、誰か止めてくれ・・・。 *後書き・・・ ・最初はノロノロ、後半はダッシュで書き上げました。 嬢とさんの会話の中身は、もろに私が思ったことそのままです。 つくづくデグレアズ贔屓な会話ですねぇ・・・。 さん、いろいろと微妙な台詞を漏らしてますが、次回彼女の秘密は暴かれるかと思われます。多分。 打倒ビーニャ・・・、叶ったらマズイですね。さてさて、どうしようか。 |