「邪魔はてめえだ、くそガキがぁっ!」 地面に両手をついて、両足で力いっぱい地面を蹴る。 その力を利用して私の両足かかと部分が、叫ぶ不良の顎に炸裂した!! これぞ、拳ならぬ全体重かけた両足によるアッパーカット!!(違う) 丁度片足に体重がかかっていた不良は、 為す術もなく吹っ飛んで地面に叩きつけられる。 ついでに脳しんとうくらい起こしとけ。 「大丈夫、レシィくん?」 不良を蹴り飛ばした足で着地を決め、そのままレシィくんに駆け寄る。 するとレシィくんは、ガバッと私に抱きついてきた。 「ふえぇ〜・・こわかったですぅ〜・・・!!」 「うん、こわかったね。でももう大丈夫だから。」 泣きじゃくるレシィくんを抱き返して、背中を優しく叩いてやる。 ああっ、我が人生に一片の悔い無し!!! 思わず感涙にむせびなきたくなる私だが。 瞬間。 殺気を感じて、顔を上げる。 「なにしやがる、このアマ!!!!」 誰がアマだ、くそガキが。お前の目は節穴かい。 私の頭には自慢の黒髪が生えてるじゃないの?! 鉄パイプ片手に突っ込んでくる不良に、内心で罵声を浴びせつつ、 私は迎撃体制に入る。 がそれよりも早く、不良と私の間に割り込んだイオスの槍が、不良のみぞおちを正確に突いていた。(もちろん柄の部分で) 「ぐええっ!!!」 蛙の潰れたような声を出して、吹っ飛ぶ不良その2。 さすがに強いな・・・・。 いや、不良が弱いのか。 思わず呆然としていた私の方へ、イオスは向き直る。 「怪我をしたくなかったら、そいつを連れて下がってろ。邪魔だ。」 「はい♥ 」 あぁ、不思議。 同じ台詞でも言う人間が変わると、こんなにも違う印象を与えるものだなんて。 私はそこいらに落ちていたサモナイト石をパパッと集め終えると、泣きやんだらしいレシィくんを立ち上がらせて、その場を離れようとした。 すると、不意にイオスがこちらへ何かを投げた。 反射的に受け取って、ズシッとくる重さに顔をしかめる。 見てみれば、それは槍だった。 って、イオスの槍?! 「万が一そいつらがお前達の方へ向かったら、それでなんとかしろ。」 「あ、ありがとうございます。」 御礼を言って、私はレシィくんと共に後ろへ下がる。 本当は不良を殴り飛ばしたかったけど、イオスにそこまで言われちゃ仕方ない。 それにここからなら、イオスの勇姿を携帯におさめられるし・・・。 手にはイオスの槍もあるし とりあえず、彼のお手並み拝見・・かな? 「ど、どうしてイオスさんが?アメルさんを狙ってる僕らの敵なのに・・・。」 ようやく落ち着いたのだろう。 レシィくんが不意にぼそりと呟いた。 あ、そういえばそうだった。 考えてみたら、トリス達とルヴァイド達って敵同士だったんだよね。 う〜みゅ・・・。 とはいえ、まさかここで「レイムっていう吟遊詩人が大悪魔で、デグレアはすでに悪魔達に滅ぼされてて、ルヴァイド達はだまされてるんだよ」なんて言っても、信じてもらえそうもないしなぁ・・・・。 というより、絶対にこっちが疑われかねん。 かといって、このまんまの状況ってのもね・・・。 んむ。 「ねえ、レシィくん。もしもよ?もしも君の目の前で、ルヴァイドやイオス達が殺されそうになってたとしたら、どうする?」 ・・てか、そんな状況滅多にないだろうけどさ。 もしもよ、もしも。 「・・・・・・。」 「敵だから、見捨てる?・・それとも・・。」 「ご主人様なら・・きっと、助けると思います・・・・。」 私の言葉を遮って、レシィくんがポツリと呟く。 トリスなら、きっとそうするでしょうね。(マグナも多分同じ) 「でしょ?敵だったとしても、むざむざ見殺しにしたりなんて出来ないでしょ? イオスも多分それと同じよ。」 「・・・・そうでしょうか・・。」 イマイチ煮え切らないレシィくん。 可愛いから許すけどさぁ〜、正直煮え切らないのは嫌いよ。 「んじゃ、なにか?敵が死にそうになるところを、お茶飲みながらじっくり観察して、敵さんが死に絶えていくとこ見て、指さして笑ってやる?」 「・・・・それって、鬼・・・・ 」 やかましい、もののたとえよ。 「でしょ?だから、助けてくれたんでしょうが。それとも見捨てて欲しかった?」 「・・・それはいやですけどぉ・・・。」 う〜みゅ、なかなか手強い。 ま、私は実際に彼らがレルムの村を 焼き討ちしてるところを見たワケじゃないから。 「ねえ、レシィくん。ちょっとしたたとえ話を聞いてくれる?」 「はい?」 レシィくんが不思議そうに私のほうを見上げてくる。 はにゃあぁ〜・・・かわゆい・・・・ 「とある村に住む女の子を誘拐しようと思います。 そしたらさ、てっとりばやいのはやっぱり卑怯かつ姑息な作戦だと思うの。 たとえば、『女の子をこちらに引き渡さないと村に火をつけるぞ!』って脅すでしょ?そんで向こうが女の子を引き渡してきたら、手はず通りに村のまわりに油をまいて、火をつけて、証拠隠滅。 もし女の子を引き渡さないって言うなら、見せしめに一人一人殺していく。 これが悪党の常套手段よね。」 「・・・・・・それはちょっとひどすぎると思います・・・・。」 ひどく怯えた様子のレシィくんは、かろうじて言葉を絞り出す。 しかし私は、あっけらかんと言ってみせる。 「よくある話よ。」 事実、戦争中ならこんなことざらでしょ?(よくは知らないけど) ・・って、レシィくん怯えまくってるし。 ちょっと脅かしすぎたかな。 「でもね、あり得ない話じゃないでしょ? 本当に血も涙もない人間なら、こんなことくらい平気でやってのけるはずよ。」 できるだけ優しい声音で話ながら、レシィくんの頭を撫でてやる。 レシィくんは何も言わないまま、黙って撫でられているだけ。 ・・・今はこのくらいにしておこうか。下手に勘ぐられても困るし。 あぁ・・・それにしてもレシィくんの憂い顔・・ なんて可愛いのかしらぁ〜・・・・ ♥ これもしっかり携帯におさめておかなくては!!!! そう思って、私は片手にもっていた携帯を・・・・・・・って、アレ? さっきまで確かに携帯を持ってたはずなのに・・・・? 「レシィくん。ちょっとこれ持ってて。」 さっきイオスから預かった槍をレシィくんに預けて、 私はズボンの両ポケットに手を突っ込んで携帯を捜す。 しかし・・・・・ない。 …………OHマイガッ!!! イオスの麗しいショットとレシィくんの愛くるしいショットを撮った、 いまや命の次に大事な私の携帯電話ちゃ〜んっっ!!!!!! 何処行ったの!!!!! 人目がなければ、隣にレシィくんがいなきゃ、絶対に頭抱えてムンクの叫びよ! 「おっかしいなぁ・・・・さっきまで持ってたのに・・・・・。」 そう呟きかけて、はたと思い出す。 そういやさっき、レシィくんを助ける為に両手を地面についた覚えが・・・・・。 ・・・しまったああぁぁぁっぁぁぁっ!!!!!! あのまんま、置きっぱなしだわ! 急いで取りに行かないと!!!!! 「ごめん、レシィくん。ちょっとここで待っててね!」 「ええっ?!あぁっ、さん!!!」 レシィくんをそこにほったらかしたまんまで(ごめん)、 私は不良どものいる方へまっしぐらに駆けだしていったのだった、 *後書き・・・ ・思った以上に長くなったので、2話にカットしました。 余計な話が長くてちっとも本題に入れない・・・。 私の書く連載はいつもそうだな。 なにはともあれ、続く!!! |