…、聞こえるかい? 意識のどこか遠くで、聞こえる声。 穏やかで優しい声音。 (アーク兄様…?) ぼんやりと心の中でが問うと、アークの笑顔がそれに応える。 …ああ。こうして話すのは、久しぶりだな。 「アーク兄様とは、ね。ククル姉様とは時々話してるよ。」 …俺も話したいんだけど、いつもククルに先を越されてしまうんだ。今度ククルが来たら、からも一言言っておいてくれないか? 咎めるような口調ではある。が、けして強いものではない。 に対する愛情が妹に対するものなら、ククルに対する愛情は唯一最愛の女性に向けられるもので。惚れた弱みなのか、アークはとことん彼女に弱い。 変わっていない義理の兄の様子に、はわずかに笑みを浮かべた。 「相変わらずククル姉様に弱いんだ。 …で、アーク兄様。私に何か伝えなきゃいけないことがあるんでしょ?」 …さすがに勘が鋭いな、は。 「伊達にアーク兄様とククル姉様の妹やってないですから。」 おどけてそう言うに合わせるように、アークもまた微笑む。 だが、すぐにその表情は硬いものに変わってしまう。 …再び、闇の王が復活するかもしれない。辛いとは思うが、にはまたやつに立ち向かってもらわなくてはならないんだ。 「それが、精霊の巫女たる私の役目…だからね。」 …そうだ。俺やククルの代わりに、闇の王の復活を阻止して欲しい。万が一復活した場合には、俺たちや精霊たちの全ての力をもってやつを封印してくれ。 「それは…、私の命を使って封印するって事なの?」 …………すまない、。 「謝らないで、アーク兄様。兄様のせいじゃないのは知ってるから。 それに、闇の王を復活させなきゃそれでいいんでしょ。」 …そうだな。 「まっかせといて、兄様や姉様の代わりに頑張るから。 闇の王復活を企む阿呆共には、このさんが月に代わっておしおきよん♪」 は言いながら、某美少女戦士の決めポーズをとってみせる。 そんな彼女をアークは穏やかな笑みで見守っていた。 …。 その声に顔を上げれば、いつの間にかそばまで来ていたアークに抱き寄せられる。 「アーク兄様?」 首を傾げるを愛おしげに見つめるアークの手は、彼女の黒髪を優しく梳いている。 髪を梳く手の感触が懐かしくて、心地よくて。 はすぐそばにいるアークの身体にしがみついた。 「こうしてると、アーク兄様がすぐそばにいるように感じられるのに…」 だけど彼は、もうすでに亡くなっている身なのだ。 かつての闇の王との戦いで、彼は自身の命と引き換えにやつを封印したのだから。 今は現世に姿を現せなくなった五大精霊たちとともに、”精神世界”で純粋に魂だけで存在しているに過ぎない。 もともと異界の人間であり、常人外れの強力な魔力を持つだからこそ、こうして夢を通してアークやククルと話が出来るのだ。それ以外の者たちは、彼らの存在を感じることすら出来ない。 無意識のうちにしがみつく両手に力を込めるに、アークは優しく囁くように語りかける。 …悲しまないでくれ。俺たちのことはもう、定められていたことなんだ。だけど、にはまだ可能性がある。だから、最後まで諦めてはいけない。 「わかってるわよ!誰が諦めてなんかやるもんですか!!」 …良い子だね。それでこそ、俺の最愛の妹だよ。 「えへへ♪」 頭を優しく撫でられて、は照れくさそうに笑顔を浮かべた。 …俺はもう、行かなきゃいけない。頑張るんだよ、…。 フワリとアークの身体が宙に浮く。 彼の身体にしがみつく両腕に、は反射的に力を込める。が。 まるで魔法でもかけられたかのように、両腕から力が霧散する。 「アーク兄様!!」 叫ぶの視界から、アークの身体が虚空に溶け込むように消える。 それと同時に聞こえてくる声が徐々に遠くなっていく。 虚空へ伸ばした手は、ただ空しく宙を掴んだだけだった。 「…!!」 意識は唐突に覚醒した。 無理矢理に目をこじ開ければ、視界に入るのはいつもと同じ。 家の天井が見えるだけ。 「アーク兄様……」 はベッドの中で大きく伸びをし、強張っていた身体をほぐす そして最後に背中を大きく反らせて、ゆっくりと上半身を起こした。 上半身を起こしたついでに起きあがり、分厚いカーテンの引かれた窓へと足を進めると、はカーテンを引いて窓を大きく開放した。 朝焼けの終わりきらない空は、ほのかに明るい蜜柑色を帯びた柔らかな色彩に彩られている。朝日よりも上にある空は美しい青に輝き、朝日に照らされる空の色は鮮やかでいて淡い暖色系の色彩に染まっていた。 今日もまた、一日が幕を開ける──────── *後書き… ・アーク3プチ連載ものの序章です。 しょっぱなからすでにネタバレ状態な感じですね、はい。 いきなりアークが出てきて、3しかやってない人には何がなんだか? でも3だけやってる人なんて、あんましいなさそうだし。大丈夫、大丈夫。 にゅ〜…、アーク兄さん好きだ〜っ!!(意味不明) |