「そのくらいで良いか、日番谷。そろそろ儂の方でも本題に入りたいんじゃがな」
美髭公と称された三国志の英雄・関羽のそれよりも長く立派な白い顎髭を撫でながら、
玉座にも似た位置にある椅子に座っていた老人がゆっくりと立ち上がる。
「ああ」
老人――山本元柳斎重国総隊長の方へと視線を向けると、日番谷隊長は一歩後ろへと退いた。そうすれば、私と山本総隊長との間を遮るものは何もなくなる。
「さて、旅禍の少女――と言ったかの。おぬしは何の為にここへ来た? 」
それほどきつい眼差しというわけでもないのに、なぜか見られているだけで恐怖すら感じる。まだ半世紀も生きていない私からしてみれば、かの老人の纏う厳格さや威厳といったものに触れたことがほとんどないのだから、恐怖で退きたくなるのも仕方ないのかもしれない。
だけれども、私は居酒屋の若女将よ? 地元の暴力団員や某国の大統領とその護衛諸々など、錚々たるメンバーの接待までこなしてきた肝っ玉女将よ?
こんなことくらいでへこたれてなるものですか!!!
「単刀直入に言いますと、私が昨日誤って蒸発させてしまった露天風呂のお湯を元に戻す為に来ました」
私は山本総隊長の目をしっかりと見据えると、一字一句を滑舌よくはっきりと発言した。
「露天風呂のお湯を戻す為?
……そういえば、女湯の露天風呂が使えなくなったとは報告を受けていたが……」
山本総隊長はそこまで言って、ちらりと視線を複数方向へと投げる。
「確かに、露天風呂のお湯は跡形もなく消えていましたけれど……、それが貴女のしたことだと言うのですか?
」
穏和で優しい声音は、長い黒髪を身体の前面で一つに編み込んだ特徴的な髪型の鷹揚な雰囲気持つ女性――卯ノ花隊長のものだった。
「はい。そのとき一緒に乱菊さんがいましたので、聞いて頂ければわかると思いますが」
別に後ろめたいところがあるわけでもないので、私は卯ノ花隊長の方へと向き直り、ニッコリと微笑み返しながら言ってのける。
「その話は松本から聞いた。嘘を言ってるわけではないことは、俺が保証する」
私の言葉を引き継ぐように、日番谷隊長が言葉を続ける。
「ふむ……。して、露天風呂のお湯を元に戻すというのはどういうことか? 」
そして思った通り、こんな問いかけが山本総隊長から発せられた。
日番谷隊長の時もそうだったが、お湯を蒸発させるだのお湯を戻すだの、実際に目にして
いない限りはイマイチ半信半疑で当たり前ではある。
「言葉通り、私が蒸発させてしまったお湯を元に戻します」
「蒸発? 随分と面白いことを言う娘だね。旅禍風情にそんな事が出来るはずがない」
はなから出来ないと決めつけてきたのは、人外魔境(勝手にそう呼んでる)こと涅隊長だ。しかし実写で見ると、顔が黒いし声が同じなだけあって、ふとバイキ○マンを思い出してしまうのは、私だけだろうか。
「出来るか出来ないかは、御自身の目でお確かめ下さい」
その言い方にカチンときた私は、相手の方をわざと見ないままできっぱりと言い返す。
「おもしれえじゃねえか。そこまで言うなら、実際にやってみせてみろよ」
猛禽類…いや肉食獣を彷彿とさせる鋭い目は、視線を向けられたそれだけで、異様な圧迫感を感じさせる。全体的に大柄な人が多い隊長たちの中にいても、なお抜きんでた頭――狛村隊長は例外という事でーーは、奇抜な髪型に整えられ、毛先には可愛らしい鈴がつけられている。そのセットを自分でやっているというから、見た目に反して案外と器用なのか。殺気を浮かべていなくても十二分に恐怖を感じさせる強面は、更木隊長だ。
「無論、そのつもりです」
まるで抜き身の剣先を首に突きつけられているような圧迫感に押されながらも、私はニ
ッコリと営業スマイルを浮かべて返答を返した。
怖い顔くらいでびびってたら、居酒屋の若女将なんて務まるものじゃあないのだ。
現役の軍人さんから果ては某国の大統領までも接待してきた、私の女将魂を舐めてもらっては困る!
「おいおいおい、ちょっと待っておくれよ。簡単に言うけどね、お湯を蒸発させるってものすごい事なんだよ?
そんな安請け合いして大丈夫かい、ちゃん? 」
「僕も京楽の意見に賛成だ。日番谷君が保証する以上、君の実力は認めるけれど……剣八や涅の挑発に乗るのはよくないよ」
赤銅の色彩を宿す柔和な瞳に、同色の短い髪。まるで春の日だまりを彷彿とさせる雰囲気を持った、物腰の柔らかそうな男性。取り立てて美形というわけでもないだろうが、その人当たりの良い性格を反映してか、不思議と人を惹きつける何かがある人。
五番隊隊長・藍染惣右介。端から見る分には人畜無害な人ではあるのだが、いかんせんコミック二十巻まで読破済みの私からすれば、どうしても本性を現した時の印象が強くて、警戒せざるを得ない相手である。
だけど傍目にはそんな素振りは見せないけどね?
「まあまあ、八番隊長さんも五番隊長さんもええやないの。ちゃん本人がやれるって、言うとることやし。なあ? 」
京楽隊長と藍染隊長の間に割って入ってきたのは、紫がかった銀の髪と目を開けてるのかそうでないのか判別しがたい細い目が特徴的な、こちらもなかなかに端整な顔立ちのお兄さん。これらの特徴に関西弁とくれば、該当人物は市丸隊長の他にいない。
にしても実写で見ると、ホント美形だなぁ……この人。
「君ならおもろいもの見せてくれそうやし、ほな、早速やってみせてもらおか」
褒めてくれているのか、そうでないのか。どちらとも判別しがたい言葉を並べる市丸隊長は、いまいち本心の読めない笑みを浮かべていた。
「そうじゃのぉ。そこまで言い切る自信があるというのなら、実際にやらせてみようではないか。その結果次第では、日番谷の意見を取り入れることにする」
顎髭をしごきながら、山本総隊長もまた市丸隊長の意見に賛同する。
この時点ですでに方針は決まったも同然。私は蒸発させた露天風呂のお湯を戻す前に、もう一度お風呂のお湯を蒸発させなくてはならなくなった。
まあ、“ヨルムンガルド”なら見境無く暴れるのは得意そうだから、心配ないけど。
それよりもむしろ気になったのは、総隊長の言葉の後半――
「……日番谷隊長の意見って、何ですか? 」
「気にすんな。それよりも、おっさんたちにあれだけ堂々と言い切ったからには、失敗は許されないってこと、わかってるんだろうな」
「無論です。心配して頂いてありがとうございます、日番谷隊長。でもご心配なく。
隊長と乱菊さんに受けた恩を仇で返すようなことにはなりませんから」
何気なく心配してくれている日番谷隊長の言葉に、私は心が浮き立つのを感じていた。まさか心配してもらえるとは思わなくて、予想外の事態に嬉しさがこみ上げてくる。
喜びを隠せぬまま、いつもよりもやや緩んだ笑顔を浮かべて答えれば、日番谷隊長は一瞬虚を衝かれたように狼狽えた。
だがすぐにそんな様子は消えて、代わりに浮かび上がったのは不敵な表情のそれだ。
一層輝きを増した煌めく翡翠の双眸が、私の方へと真っ直ぐに向けられる。
「……ホント、妙なとこで律儀だよな、お前」
「そうですか? 」
きょとんとして聞き返すと、日番谷隊長はかすかに苦笑いを浮かべた。
「風呂のお湯を戻す為にわざわざ来る奴がどこにいる? どうせ知ってるのは、俺と松本だけなんだ。素知らぬふりしていることくらい、やろうと思えば出来るだろうに。それをわざわざ申告して、挙げ句の果てにおっさんたちの挑発もきっちり受けやがるし」
「立つ鳥跡を濁さず、が私のモットーですから」
「………ったく、自分から進んで面倒事を背負うなよ」
溜息混じりに吐き捨てられた言葉は、不思議と柔らかさすら帯びていた。
「それは日番谷隊長も同じでしょう? 私みたいなどこの馬の骨ともしれない奴の話を、貴重な仕事時間を割いてまで聞いてくれて、その上昨日会ったばかりの私の心配までしてくれるんですから。面倒事を自ら背負う悪い癖はお互い様ですよ」
「……まあ、正論だな」
結果として言い負かした形になるのだが、それでも日番谷隊長は機嫌を損ねるどころか。純粋な笑顔―――柔らかな笑みを浮かべていた。
うわ…、これは相当希少価値の高い笑顔かも……。
「正論で言い負かされたのは、随分と久しぶりだ。律儀過ぎるところはあるが、常識が普通に通じるところは正直買いだな。そうとなれば……。さっさとお前の力をここにいる全員に見せつけて、死神になれ。お前が死神になった暁には、俺の隊に入れてやる。
そうすれば、望み通り俺と松本に返したいだけ恩を返せるだろ」
って、日番谷隊長からもスカウトされちゃいましたよ、私?
しかも「買い」だって?! そんな事言われたら、嬉しくて頑張っちゃいますよ?
でも…。最終的に決定権があるのは、山本総隊長でしょう?
「……日番谷隊長? そんな安請け合いしていいんですか? 」
内心の喜びを必死で押し殺し、私は気になった事を聞いてみる。
「安請け合いに関してお前に言われたくねえよ。心配するな。
隊員の所属に関しては、各隊長が相応の権限を所有している。
よほどの事がない限り、大抵各隊長の要望は通るようになってんだよ」
あ、なるほど。
だからトリップ夢小説だとよく、各隊長さんがヒロインの取り合いする場面があるのね。
「ずるいなぁ、日番谷。僕にはちゃんを口説くなとか言っておいて、自分だって口説いてるじゃないか。かわいこちゃんを独り占めしようたってそうはいかないよ」
両肩に大きな手が置かれて、振り返ってみればビックリするほどに京楽隊長の顔が間近にあって、私は心底絶叫しそうな勢いで驚いた。
つくづく思いっきり後ろを振り返らなくて良かった………ような気がする。
もし思いっきり振り返っていたら………、多分、確実に、不可抗力とはいえ、私が京楽隊長の唇を奪う図が出来上がるところだった………(滝汗)。
「何でもかんでもてめぇの尺度で測るな、おっさん。別に口説いてるわけじゃねえよ。
こいつが死神になった暁にはうちの隊で働かせるって言ってるだけだろうが」
京楽隊長が出てきた途端、折角可愛い笑顔を浮かべてた日番谷隊長の表情が一瞬で豹変する。コロコロと表情がすぐに変わるところなんて、子供っぽくて可愛いなぁ…なんて思うわけだけれども、そんなことは口が裂けても言えない。
「それを口説くって言うんだよ。いっとくけど、僕だってちゃんを自分の隊に入れたいと思ってるんだからね。そう簡単に十番隊所属が決定するとは思わない方がいいよ」
日番谷隊長と不毛な争いをするのは結構ですが、とりあえず後ろから腰を抱くのはやめて頂けないでしょうか、京楽隊長。セクハラで訴えますよ?
「十番隊長さんも八番隊長さんもえらいご執心やね。でもなぁ…僕だって、うちにちゃん欲しいんよ。真面目だし、おもろいし、イヅルにも楽させたいしな」
火花を散らし合う日番谷隊長と京楽隊長の間へとひょいと入ってきたかと思うと、市丸隊長はいつものように感情の読めない笑みを浮かべたままで、私の頭にポンと手を置く。
「吉良が大変なのは、てめぇが仕事をさぼるせいだろうが」
日番谷隊長は相手を射殺せそうな鋭い眼差しを市丸隊長へとくれて、きっぱりと言ってはいけない裏事情を指摘するが。
「ちゃんがいてくれたら、僕きっと真面目に仕事するで〜」
だけれども、市丸隊長はまるで気にした様子もなく、私の頭をわしゃわしゃと撫でているだけだ。
「それなら僕だって、可愛い七緒ちゃんの為に是非ともちゃんが欲しいなぁ」
……なんだかんだ言って、この二人、ただ労働力が欲しいだけなんじゃ……。
「ふざけんな! どうせを入れたって、まともに仕事する気なんてないだろうが。
部下に迷惑かけてる自覚があるなら、真面目に仕事しろ!!! 」
「……ありがとうございます、日番谷隊長。私の言いたい事、全部言って下さって…」
私の言いたかった事をそのまま言ってくれた日番谷隊長に、私はペコリと頭を下げる。
「、お前意外といい性格してんのな」
対する隊長の反応と言えば、口元を歪めた苦笑いが返ってきただけだ。
「はい? 」
私は、なにか悪い事を言っただろうか???
「……いつまでそこでじゃれてるつもりだ、兄等。
私は暇ではない。やるのならさっさと終わらせてもらいたいものだな」
反論を許さぬ冷徹な眼差しが、真っ直ぐに私たちへと向けられる。
艶めいた漆黒の髪、抜き身の刀身を思わせる鋭い闇色の瞳。眉目秀麗・容姿端麗、それらの熟語を体現するような非の打ち所もない美貌の持ち主である。計り知れぬ威厳と高潔な印象を見る者に与えるその人――六番隊隊長・朽木白哉。
これまたとんでもない美形だ。実写でこんな美形さんがいるのね?!
だが外見はともかく、どうも妙に近寄りがたい雰囲気があるから近づけない…。
「そないに言わんでもええやないですか、六番隊長さん。
たまには、息抜きも必要とちゃいます? 」
市丸隊長は悪びれた様子もなく、ひょいと肩をすくめるが。
その後ろから、また別の人の声がかかる。
「私も同意見だ。やるならやるで、さっさと終わらせろ」
立ち位置は最初のときのまま、顔だけをこちらへ向けて言い放つのは、深い紺色の瞳と綺麗に外側へ跳ねた漆黒の髪持つボーイッシュな女性。小柄かつ華奢な体躯ではあるものの、凛々しい風貌と身に纏う雰囲気とが相まって、男装の麗人といった印象も受ける。二番隊隊長兼隠密機動総司令を務める、砕蜂だ。
「朽木隊長、砕蜂隊長、あまり急かしては可哀相ではありませんか。
日番谷隊長、京楽隊長、市丸隊長、ひとまずそのお話は後日に回して下さいませ。今は、彼女の力を見極める事が最優先の筈です。総隊長のご指示に従いましょう」
混沌としてきた隊長たちの会話に終止符を打ったのは、柔和な微笑をたたえた卯ノ花隊長であった。やんわりとした印象があるけれど、締めるところはビシッと締める!
いいなぁ、まさに卯ノ花隊長のような女性こそ、私の理想だわ。
「うむ。それでは、これより場所を移し、この娘に死神となる資格があるか否かを見極める審判の場を設ける。場所は……そうじゃのぉ、瀞霊廷内の銭湯でよいか」
総隊長の鶴の一声で、あっさりと全てが決定される。
私はただ風呂のお湯を戻しに来ただけなのに、気付けば“死神になれるか、否か”なんて選択肢まで関わって来ちゃって…。
そりゃあ死神になれたら嬉しいけど?
正直、虚退治は出来そうにもないからなぁ……。
「って、銭湯ってどこだっけ……」
ふと呟いたその言葉を聞いていたのか、市丸隊長がこちらを覗き込んでくる。
「心配せんでええよ。僕が連れてったる」
言うが早いか、私の身体がふわりと宙に浮いた。
「へ? 」
一体何が起こったのかわからなかった。
だけれども、気がついてみれば。
周囲の景色が見覚えのある場所――ぶっちゃけ昨日来た銭湯の入り口前――のそれになっていた。
「……ここって、銭湯…? 」
呆然と呟く私に、市丸隊長はなんら変わらぬ笑みを浮かべて答えてくれる。
「僕らが一番乗りやけど、すぐに他の隊長さんも来るやろ。
それよか、さっきから気になっとったんやけど、持ってるそれが君の斬魄刀なん? 」
「はい、そうです」
「えらい長い刀やなぁ。ちゃんの背丈やったら、腰にさせんとちゃう? 」
「その心配はないと思います。私、腰に差す気はないですから」
私の言葉に、市丸隊長はいささか訝しみにも似た色を顔に浮かべる。
「刀を腰に差さんとどこに差すねん? 十番隊長さんみたく背負うんかいな? 」
「自分で持ち歩く必要はないんですよ。呼べばいつでも来ますから」
前なんて名前を呼んだだけで、勝手に発動した上、能力の一端までもしっかりと見せてくれたからね。つくづくサービス精神旺盛な斬魄刀ですよ、全く。
「変わった刀やなぁ」
はい、私もそう思いますよ、市丸隊長。
「でも、市丸隊長の刀も十分変わってますよね。脇差しくらいの長さしかないじゃないですか。私の刀と市丸隊長の刀と、足して二で割ったら丁度いい長さになりそうですけど」
私は思った事をそのまま口にしただけなのだけれど、なぜか市丸隊長は一瞬、思いがけないことを言われたかのように目を瞬かせた。
「……ほんまおもろいな、自分。ますます僕の隊に欲しいわ」
この人の“欲しい”は、新しい玩具を欲しがる子供のそれに近い。
感情が一切読めないのに、今の一言からはそんな感情の色がわずかに滲み出ていた。
「面白いとか興味半分で欲しがられても、全然嬉しくありません」
ムッと頬をふくらませて、私がきっぱりと言い切れば。
「きっついなー」
言葉とは裏腹に、市丸隊長は全然堪えていない様子だ。
「市丸、てめぇ!! 」
瞬歩で追いついてきた日番谷隊長の怒声が響く。
ようやく私が目で捕らえたときには、既に市丸隊長の真正面に彼は立っていた。
「そないに怖い顔せんと、僕はただ十番隊長さんが出来ん事を代わりにやってあげただけですわ」
怒りの形相を露わにする日番谷隊長に対して、市丸隊長は軽く肩をすくめるだけ。
日番谷隊長に出来ない事を代わりに……、というと。
私をお姫様抱っこして、ここまで瞬歩で運んでくる事?
「ふざけんな! 」
翡翠の瞳に怒りの感情も露わに浮かべ、日番谷隊長が激昂する。
もとより相性が悪いという事もあるだろうが、先ほどの市丸隊長の言葉は暗に日番谷隊長のコンプレックスをこれでもかとばかりに衝いてきたからだろう。
「まあまあまあ、落ち着いて下さい日番谷隊長」
焼け石に水だろうと予想しながらも、私は肩をいからせる日番谷隊長を宥めようとするけれど、当の相手はまるで聞く耳を持ってはくれない。
「彼女の言う通りだよ、日番谷君。市丸も、あまり日番谷君で遊ばない」
そこへ追いついてきた藍染隊長が間に入って二人をーー特に日番谷隊長――宥める。
市丸隊長はまるで反応が読めない表情のままだけれども、日番谷隊長はかすかに舌打ちしつつ、それでも藍染隊長の仲裁を受け入れる。
「……わかった。審判の場は中だ、行くぞ」
市丸隊長に厳しい一瞥を向けると、日番谷隊長は踵を返してさっさと歩き出した。
「はい」
私は従順の意志を返すと、幾分頭の位置の低い隊長の後を追った。
たいしたことではないんだろうけれども、今の一連のやり取りがまるで「上司と部下」の会話みたいでちょっとドキドキしてしまった。その上、上司にあたる相手が日番谷隊長だったから、余計にね。ドキドキもしたし、嬉しさを感じてしまったのも事実だ。
あぁ、ミーハー根性ここに極まれり。
だが、ミーハー思考に浸りたいのなら、まずは。
私の実力を護廷十三隊の隊長全員に認めさせなければならない。
それにしてもいつの間に、こんな大事になってしまったんだろう。
私はただ、お風呂のお湯を戻しに来ただけだったのになぁ……。
*後書き...
・王道トリップ連載・第5話目(後編)、お届けです。
気付けば、日番谷隊長のほかに京楽隊長が妙に出張ってる???
市丸隊長の関西弁、難しいし(根っからの関東人ゆえ)。
出来るだけ多くの人を…と思いましたが、まだ数人出てません。
スカウトされる辺り、少しは夢っぽい展開になったかな?
だけどこりゃ、逆ハー的展開になりそうです。
無論、最終的には日番谷隊長に軍配が上がるわけですけど。
もしも「こんなシチュが見たい!」というご要望がありましたら、是非ご一報を。
(06.02.16up)