作文お題「夏と海」
頭上から降り注ぐ灼熱の日差しが、容赦なく身体に照りつけてくる。
長時間高圧の熱線に焼かれた足下の白浜は、素足でもないにも関わらず、足の皮膚を焦がさんばかりに熱を放っていた。
海の向こうから吹き付けてくる風が肌に浮いた汗を攫い、時折ヒヤリとする感覚が何とも心地よい。
額に貼り付いた榛色の前髪を払いのけ、彼は誰に言うでもなく呟いた。
「変わらぬな・・・ここもリィンバウムも・・」
上空から照りつける真夏の太陽も。真っ青な青空に浮かぶ白い入道雲も。
寄せては引いていく心地よい波の音も、眼前に佇む果てなく広がる海も。
何も変わらない。彼の本来いるべき世界、リィンバウムのそれと。
「そりゃ、海はリィンバウムにだってあるでしょ?たいして生活習慣は変わらないんだから、海に違いがあるわけないって。むしろ違ってる方が怖いよ」
「・・それもそうか」
つい先程まで波打ち際で遊んでいた少女が、サンダルを両手に持ってこちらに向かってきていた。かすかに苦笑いを浮かべる少女につられて、男も滅多に浮かべない微笑みを浮かべて見せた。
「なに、ルヴァイド。ちょっぴりセンチメンタルな気分なの?」
からかうような口調で少女――――があっさり言ってのける。
首を傾げた拍子に彼女の長い黒髪は、さらさらと肩越しを滑り落ちていく。
「悪いか?俺だってたまには物思いに耽ることだってある」
「そりゃそうだけどさ・・・。・・ってこれ以上言わない方がいいね」
ルヴァイドは何も言い返さぬまま、ニヤリと笑う少女の身体を抱き上げた。
が小柄であることもさることながら、ルヴァイドは長身かつ逞しい体躯の持ち主だ。彼女の身体はあっさりと抱き上げられる。
その一連の動作があまりに自然だったので、は自分が置かれている状況を把握するのがやや遅れた。
「ちょっと、いきなり何を・・・!」
文句を言いかけたの言葉は、最後まで発せられなかった。
不意打ちにも近いルヴァイドのキスでその先を封じられてしまったのだ。
しばらくしてキスから解放されると、はルヴァイドから視線を逸らして呟く。
「・・・不覚を取ったわね、私としたことが・・」
彼女の頬はほんのり桜色に染まっていた。
「それはいつもだろう?」
滅多に見られない恥じらうの姿を鑑賞しつつ、ルヴァイドは口の端を歪める。
古くは武士の家に生まれたは、剣道と空手の使い手である。ただ幼い頃から武術に親しんできたせいなのか、はたまた地の性格か。とかく男勝りな少女でもあった。
そんな彼女が時折見せる乙女らしい仕草は、新鮮なだけに余計に愛らしくて。
の少女らしい仕草見たさに、ルヴァイドがこのように不意打ちを仕掛けることは今に始まったことではない。
そしてもそのことは知っている。
だからこそ、彼の一連の行動に気をつけているのだ。
・・・しかし。ルヴァイドの方が一枚も二枚も上手のようで、未だ彼女が彼の不意打ちを防げた試しはなかった。
「なんだかなぁ・・・」
不満を表すように口を尖らせて、はルヴァイドの首に腕を回して抱きついた。
彼女を抱く手に少し力をこめて、ルヴァイドは再び果てのない水平線へ目をやる。
終わりなく先へ伸びていく大海原。
それはこの世界とリィンバウムのかすかな繋がりを表しているのか。それとも・・・・・。
「。」
不意に名前を呼ばれて、彼女は顔を上げる。
「俺の中からリィンバウムの記憶は消えることはない。あの世界を懐かしいと思うことはこれからもあるだろう。それでも、俺がこの先生きる世界は、お前がいるこの世界だ。」
ルヴァイドの榛色の瞳がまっすぐにの黒い瞳を射る。
一点の曇りもない真剣な眼差しは、偽りの入り込む余地もないほどに鋭い。
はかすかに表情をほころばせた。
「故郷を懐かしいと思うのは当然のことでしょ。そんなことであなたの決意を疑うつもりはないわよ。
騎士が剣にかける誓いは、そんな程度で崩れるようなやわなものでもないはずでしょ?」
「・・ああ。」
「大丈夫よ。私、ルヴァイドのこと信じてるから。
誠実なあなたが誓いを破ることなんてないわ。そんなところを私は好きになったのだもの。」
の黒い瞳がルヴァイドの榛色の瞳を映し出していた。
ふとが目を閉じると、それに誘われるようにルヴァイドも目を伏せ・・。
どちらからともなく口づけを交わす。
潮の香りを含んだ風が吹き抜けていく。
波の音は耳に心地よく、打ち響き。
遥か上空から太陽の光が地上に降り注ぐ。
それらは彼らを祝福しているかのように、けして途切れることはなかった。
*後書き・・・
・お初なルヴァイド夢でございました!いかがでしょう?
う〜む、何つーか微妙?どうにもルヴァイドさんは動かしづらいです。
どちらかといえばイオスの方が動かしやすいッス。
今回の設定はパラレルな連載の主人公さんに出て貰いました。
もちろん舞台は地球です。
以前日記に授業で「夏・海」の御題で作文を書きましたが、
この作品はそれを少々アレンジしたものです。
さすがにこのままの内容を作文に書いて提出しちゃまずいだろ。
ってかいまいち甘いのか、そうでないのかよくわからん・・・。