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I'm Whereabouts〜僕の居場所、私の居場所

自分の居場所。
それは誰かが決めてくれるものじゃなくて。
自分自身で決めるもの。
たとえ周りの人間に違うと言われても。
自分で居場所だと思えるところが、きっとその人の居場所。


だから、自信を持っていいんだよ?

貴方が望むなら。
貴方が望んでくれるなら。

いつだって私は、貴方の居場所になれるんだから。







 呼ばれて私は、今まで目を落としていた本から顔を上げる。
見上げた先にいたのは、困ったような表情を浮かべたアズリアの姿。

「イスラの姿が見えないんだが、どこへ行ったか知らないか?」
 彼女がこんな表情を見せるのは、十中八九イスラのことで何か思うところがある時だ。
いい加減10代後半にもなった弟のことをこれだけ気にかける姉というのは、非常に珍しい。
とはいえ、彼女たち姉弟は事情が複雑だ。何せ、悪の秘密組織(=無色の派閥)がイスラを散々利用するだけ利用しまくってくれたおかげで、一時は実の姉と弟でありながら、対立する立場にあったのだから。
 紆余曲折の末、どうにか事件は解決したもののが、アズリア・イスラ姉弟の間には未修復のままの溝が多数残ってしまっている。それを取り除きたいと願うアズリアからすれば、イスラのことをいろいろと気にかける気持ちもわからないでもない。

 ・・・だけどさ、弟思いほどほどにしておこうね、アズリア。
 レックスの後ろ姿がかなり哀愁漂ってるから。

「知らないけど・・・何か用事でもあるの?」

「いや・・ただ姿が見えないから、ちょっと気になっただけだ」

 やれやれ。

 私は手に持っていた本を机の上に置くと、その場に立ち上がった。

「わかった・・・私がイスラを捜してくる。だからアズリアは、後ろでのの字書いてるレックスをどうにかしてなだめなさいよね?」

「レックスを?」
 私の言葉に訝しげな表情を浮かべると、アズリアは後ろを振り返る。
そして、暗雲背負ってのの字を書き続けるレックスの姿を目の当たりにすると、慌てて駆け寄っていく。

 全然気づいていなかったのか、アズリア・・・。
 弟思いも良いけど、少しは自分の彼氏も構ってあげなさいよね。

 沈没モードのレックスを必死でなだめるアズリアの声を聞きつつ、私はその場を後にした。




 外はとても気持ちよい天気だ。柔らかな風が虚空を吹き抜けていき、息を吸い込めば清らかな森の空気が胸一杯に広がっていく。
 イスラがアズリアや私たちに内緒で家を出て行くのは、そう珍しいことじゃない。むしろ家にいる方が珍しいくらいだ。おそらくはあの空間にいるのがいたたまれない・・・のだろうけれど。何度も何度も黙って出て行くのはやめて欲しい。
 思い詰める節のあるイスラだから、いきなり海に身を投げて投身自殺とかしてそうで怖い。
多分アズリアが心配しているのも、私と同じような理由からなのだろう。


「やっぱりここにいた」
 テクテクと森の中へ足を進めていくと、ほどなく場の開けた所に出る。
鬱蒼と生えていた森の中にポッカリと開いた草むらにもよく似たこの場所には、日差しを遮る木々の群れがいないので、日の光が十分に差し込んでくるのだ。

 そんな草むらに寝っ転がるようにして、イスラはボンヤリと虚空を見つめていた。
燦然と輝く太陽の光が彼の漆黒の髪を鮮やかに彩っていく。透き通る白い頬は、あたたかい気温のかほのかに赤みを帯びていた。わずかに伏せられた闇色の瞳は、わずかに潤んで艶やかな光を放つ。

 ・・・え〜と、すみません。滅茶苦茶可愛いんですけど。
 これで女物の服着せたら、完全に掛け値なしの美少女だよ・・・。


 ちょっぴり女としての敗北感に襲われつつも、気を取り直し。私はイスラの方へ近づいていく。
草を踏みしめる音に気づいたらしく、彼はけだるげに上体を起こした。

か・・・。何の用?」
 瞳に宿る光は不機嫌そうだったが、これはいつものことなので今更気にしない。

「アズリアが心配してたから、呼びに来たのよ」
 私がそう言えば、イスラはなんとも複雑そうな顔をして再び草むらに倒れ込む。

「・・・そう、姉さんがね・・・」

「アズリアが心配するのわかってるんだから、出かける時くらいは声かけて行きなさいよ。彼女と面と向かって話すのがまだ大変だって言うなら、私でも言いからさ」
 言いながら、私はイスラのすぐ隣に腰を下ろす。
柔らかな草と頭上から降り注ぐあたたかな日差しは想像以上に心地よい。

 イスラがここに入り浸る気持ちもわからないでもないな。

「・・・わかったよ。わかったから、さっさと向こう行ってくれない?」

「イスラ、何怒ってるの?」

「別に怒ってなんていないよ」
 私が顔を覗きもうとすると、イスラは避けるようにツイと横を向いてしまう。
これを怒ってると言わないなら、拗ねてるとしか言いようないんだけどな。

は姉さんに言われてここに来たんだろ?もう姉さんの伝言は伝え終わったんだから、さっさと戻れば?」

「・・・私が自分の意志で貴方に会いに来たんじゃないと思って、拗ねてるの?」

「だ・・っ、誰がそんなこと!!!」
 からかうつもりで言ってみた言葉に、イスラは反射的に上体を起こして反論してきた。

 ・・・でもね、顔真っ赤にしながら怒鳴っても、説得力ないよ?

「あのね、私は面倒くさいことは大嫌いなの。アズリアに頼まれただけなら、わざわざここまで来ないわよ?私自身もイスラに会いたかったから、ここまで来たんじゃないの」

「・・・嘘」

「嘘じゃない。私が今まで一度でも君に嘘ついた例があった?」
 珍しくハッキリと私の気持ちを言ってあげたのに、イスラは相変わらず不機嫌な表情のままだ。

 ま、若干頬の色が少し赤らんできてるけどね。

「・・・・一度もない。は僕に嘘はつかない・・・」

「わかってるなら信用してよね」
 私はイスラを優しく抱きしめてやると、苦笑いを浮かべた。

「ごめん・・・」
 彼の顔が私の長い黒髪に埋められ、強くかき抱かれる。

「いいわよ、別に。怒ってないから。その代わり、どうしてしょっちゅう黙って家を抜け出すのか、理由を教えてよ」
 私がそう訊ねると、イスラは沈黙した。

「私にも言えないこと?」

「わかったよ、言うよ。・・・あそこには、僕の居場所がないから。それだけだよ」

 言うだろうとは想像していたけれど。
 こうもドンピシャに当たると、それはそれで溜息をつきたくなるのはどうしてだろう。

「あのね、イスラ。それは私も同じよ。少なくとも、アズリアとレックスのところに私の居場所はないもの」

「君の場合と僕じゃワケが違うよ。僕は・・・」

「過去の話を持ち出すのは却下だからね、イスラ」
 言葉を遮るように私がキッパリ言い放つと、彼はその先の言葉を飲み込んだ。

 やっぱり昔のことをグチグチと言うつもりだったのか。

 思わず深い溜息をつくと、私は肩の上にある彼の頭を優しく撫でる。

「どうして異世界の人間である私がここに留まったか、わかる?確かに向こうの世界には、私の家族がいる。私の居場所はあっちの世界にも確かにあるのよ」

「・・・・」

「でもね。こっちの世界に来て、私はもっとしっくりくる自分の居場所を見つけたの」

 離れたくないと思う場所。
 ずっと居続けたいと思う場所。
 それは何も自分に縁のある場所だけとは限らない。

「違うと言われるかもしれないよ。だけど、それでも。私が自分の居場所だと思える場所は、たった一つなの」

 そっと顔を上げたイスラの黒い瞳が、真っ直ぐに私の瞳を見据える。
これから先に言おうとしている言葉を思って、私は少々気恥ずかしい思いに駆られたがここまで来てそのままというわけにもいかない。

 だから私は、イスラから極力目線を逸らすようにして、モゴモゴと呟いた。

「だから、いくらイスラが違うって言い張っても、私の居場所は・・・ここなのよ。貴方のすぐそばが、私の居場所なんだからね・・・」

「・・・・・・」
 我ながらとんでもなく恥ずかしいことを言ったような気がして、思いっきり顔を背ける。
だけどイスラは、そんな私を強引に自分の方へ向かせた。

「普段言い慣れないこと言って、照れてるみたいだね

「やかましい!!」
 ムキになって言い返すと、イスラはそれはそれは綺麗な笑顔を浮かべる。

「違うなんて、僕が言うと思うかい? 君の居場所が僕のそばにあるのと同じように、僕の居場所はのそばにあるんだからね」
 極上の笑顔+口説き文句に、私はそのまま絶句して何も言えない。

「それに・・・僕としては、これでも姉さんと先生に気を使ってるんだよ。おまけにこうやって家を出てくれば、と二人っきりになれるだろ?だからここに来るんだ」

 ・・・・・・・はい?

「そうなの?」

「当たり前だろ。それとも何?まだ僕が過去のことでも引きずってると思ってた?」

「・・・・・」
 もはや、返す言葉もないとはまさにこのこと。

「第一、僕の居場所が君のそばにあるなんて、今更言わなくてもわかってると思ってたんだけどね。どうやらそれは、僕の勘違いだったみたいだけど」

 呆然とする私の唇に軽くキスを落として、イスラは不敵な笑顔を浮かべてみせた。

「ま、いいさ。今晩、じっくりと教えてあげるから」


 とても笑えない。

 否、笑い事じゃない宣戦布告をあっさりと告げられて。
私は今度こそ、完全に、続ける先の言葉を失ったのだった。

*後書き・・・
・サモン3相手夢のお初は、イスラでした。
すっかりオリジナル的要素満載な夢になってしまって申し訳ないです。
イスラはなかなかキャラが掴めてなくて、難しいです(なら書くな)。
とりあえず毒舌で甘えるのが上手くて、策士?なイメージが強かったり。
イスラファンの皆様、ごめんなさいです・・・(管理人脱兎)!!
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