、22才。
彼氏いない暦22年、ごくごく一般の女子大生。
朝起きて、大学へ行って、帰ってきて。あるいはバイトをして帰る。
さしあたって代わり映えもしない、普通の毎日を送っておりました。

ところが。
卒論提出日を間近に控えた、とある日。
私の運命はとてつもなく大きく変わってしまいました。


あぁ…、世の中って本当に何が起こるかわからないわ………。


****************


 卒論二次提出日まであと一週間を切ったーー冬将軍が刻々と近づくある日。
幸か不幸か、二次提出分を書き上げていた私ことは、皆がひいこら言っているであろう切羽詰まった時期に、余裕をぶっこいて暇を持てあましていた。

「……久々にTOD2でもやろっかなぁ…。」

 どうせ今日はバイトもないし、やるべき卒論も終わっていたから。
私は棚からTOD2のソフトを取り出すと、TVとPS2のスイッチをつけた。
 「TALES OF DESTINY2」は、弟と共にはまっているPRGシリーズの一つだ。
ただ今作品は、ファンタジアやエターニアよりも格段に戦闘システムが難しくなっていて、なかなか上手く進めなかったので放置していたゲームだったりする。

 だって私、がむしゃらにレベル上げて力押しで敵に勝つタイプだしね。

 だが、弟がプレイしているのを見ているうちに、自分でもやりたくなってしまい。
最近再び、TOD2プレイにチャレンジ中な今日この頃なのである。


 コントローラーをセットしたり、メモリーカードをセットしているうちに、TV画面はゲーム用の画面になっていた。だが私は、そのままほったらかしておく。
すると自動的にオープニングムービーが流れ出す。

 まずはじっくりとオープニングムービー&歌を賞し。
それから本編のプレイに入る。これが私流TOD2のプレイ方法だ。


 綺麗な歌と綺麗な画面が流れに流れて、オープニングがようやく終わった。

 さあ、これからがプレイの始まりだ。
私は気合いを入れて、コントローラーを握りしめる。


 と。


『……蚊帳の外から世界を見るのは、面白くない。
そなたもそうは思わないか……?』

 どこからともなく声がしたかと思うと、まるで風に誘われたように、唐突に。
一人の女性が、TVの前にいきなり姿を現していた。

 眩いばかりの黄金の色彩に染め抜かれた癖のある柔らかな髪は、首の角度を少しだけ変えた女の肩越しを過ぎていく。
 闇を照らす、暁の光。彼女の持つ色彩は、まさに光そのもの。
こちらを見遣る一対の双眸は、光加減で青にも翠にも見える淡い翡翠色。
東洋で神々の宝石として珍重される、美しい新緑の光を宿す翡翠をも凌ぐ美。
絶えることなく煌々と輝くのは、宝石をも凌駕する艶やかさを持つ鮮やかな瞳だ。
 着ているのは、まるでギリシャ時代を彷彿とさせるようなドレープのかかった白絹のドレス。そのドレスの上に金銀と色とりどりの宝石で装飾された鎧甲冑を纏い、腰に差された鞘には当然のことながら剣が吊されていた。
 どこかの王家の姫君か、あるいは美の女神を思わせる春の日差しを思わせる美貌の主でありながら、研ぎ澄まされた剣を思わせる印象を持つ不思議な女性だ。
 くつくつと喉の奥で笑うかの声は、聞く者の耳に心地よく楽器を奏でているかのような美声。だがその美しさと裏腹に、神々しいまでの強さと威厳とに満ち溢れていた。


「…誰よ、貴方。いきなり人の家に不法侵入した挙げ句、人の楽しみまで妨害するなんて、最低よ。」

『威勢が良いな。普通なら驚くなり、それなりの反応を見せるものではないか?』
 私がそう言って睨みつけると、その侵入者はおかしいと言わんばかりに口端を歪めただけ。

「人の問いに答えなさい。貴方、何者なの?」

『少なくとも、”人”ではないな。』

「でしょうね。なら貴女は、精霊?それとも悪魔?」

『精霊も悪魔ももとは同じ種族。
人の浅き判断で、勝手に善か悪かを見分けることなどできない。
そして私は、精霊でも悪魔でもない。私は神族に連なる者だ。』

「ほうほう。それで、その神様が私に何の用?」

『私の血を色濃く引くそなたに、提案を持ちかけに来ただけだ。
…お前は、あのフォルトゥナと呼ばれる神をどう思う?』

「フォルトゥナ?TOD2に出てくる、あのいけすかない神様のこと?
大嫌い。というかウザイし、恩着せがましいし、
てめぇの尺度で人を決めつけてんじゃねーよ、馬鹿って感じね。」

『……実に明確な答えで助かる。
ならお前は、やつに一泡吹かせてやりたいと思うか?』

「思うわよ。私はあーいう恩着せがましい神は嫌いだもの。
私の望む神は、もっと人間くさくて、いい加減で、
善の要素も悪の要素も兼ね備えた神よ。」

そう。
例えるなら、世界各地に残る古代信仰――自然崇拝から成った土着の神々。
あれが私の理想の神様像。

『ならば、望むままにすることだ。
そなた曰く“ウザくて恩着せがましいフォルトゥナ神”に
一泡でも二泡でも好きなだけ吹かせてやれ。
私がそなたに、神にたてつくだけの力を与えよう。』

「……マジですか?」

『当然だ。でなければ、わざわざ人間の前に姿を現しはしない。』

「それはありがたいけどさ…、貴方何を企んでるの?」

『企んでなどいない。ただあいつのやり方が気に入らないだけのこと。
ゆえにあのくそ生意気なフォルトゥナの鼻っ面をぶん殴ってやりたいのだ。
だが、私ではあの世界へ行けない。
だからそなたに代わりに行けと頼んでいるのだ。わかるか?』

「ふぅ〜ん………、面白そうじゃない。」

『……だろう?そなたならそう言うと思っていた。
なにせ我が血を引く、唯一の人の子だからな。』

「は………?」



ありえない言葉を聞いて、一瞬呆ける私。

 そんな私の隙をついて、彼女は力を発動させた。
風もないのに長い髪が揺れ、背には巨大な二翼の翼が現れる。
その色は、柔らかな乳白色。
彼女の身に宿る力は、凡人な私にでもわかる圧倒的な力だ。


『フォルトゥナの鼻っ面をひっぱたいてこい!
それがそなたの使命であり、唯一この世界へ戻る方法。』



 なんなんだ、それはぁーーーーーっ!!!!!


 叫びたいのに、なぜか声が出ない。
そして私の身体は、彼女――フォルトゥナ大嫌い神様の生み出した強大な魔力の渦にひきずりこまれていったのだった。





――――神という名で悪事を行う者…
           正義と戦を司る私が それを見逃してやると思うなよ………





*********************


「…………ん?」

 私はふと、目が覚めた。
目が覚めた途端、目に入ったのは真っ白な天井だった。
おおかた自分の部屋で、うたた寝でもしていたのだろう。

 さっきのアレは、全て夢………?

 いざ夢なのだと思うと、なんだかすごく損をした気分になる。
あり得ないと思いつつも、あったら儲けものだったのに。


「まあ、よかった。気がつかれたのですね?」
 ホッと胸を撫で下ろしたような安堵の声が聞こえたかと思うと、白い天井しか見えなかった私の視界に一人の女性が現れた。
若草色の柔らかな髪と淡い青の色彩を宿す一対の双眸。
浮かべる笑顔は、まるで女神か聖母のように慈愛に満ちあふれている。
穏やかで優しい雰囲気そのものを体現したような、楚々たる美女だった。

「……………ここは?」
 私は辺りをキョトキョトと見回すと、こちらを覗き込んでいる美女に向かって問う。
通常なら『あぁ素敵な人…』としばらく呆けているところなのだが、あいにくと今回は事情が違った。
 なぜなら私の目の前の美女に、非常に見覚えがあったからだ。

「ここはアイグレッテにあるストレイライズ神殿の中です。
 貴女は、神殿の中庭に倒れていらっしゃったのですよ。」

「………アイグレッテ………。」

 ゆっくりと彼女の言った都市の名前を復唱し、そして確信する。

 ここは、TOD2の世界だと。
そして目の前にいる楚々たる美女は、四英雄の一人であるフィリア=フィリスその人であることを。



……………ってことは、私。
帰るためには、フォルトゥナの鼻っ面をひっぱたかないいけないんですね。

あぁ………、私、元の世界に帰ることは出来るんでしょうか???
甚だ不安です………。





*後書き…
・性懲りもなく、やってみましたTOD2夢。名前変換、すくなっ!
面白いお題を見つけたので、それに沿って場面場面で書いていこうかなぁ…と。
どうでもいいけど、フォルトゥナをけなしまくってますね。
すみません。でも私、あーいう恩着せがましい神は嫌いなので……。
フォルトゥナ好きさん、ごめんなさい。